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記憶の定着までの流れを構築する

5ラウンドについて「1つのユニットを5回まわすのと、どう違うのか」というコメントをいただきました。これについては、記憶定着までにどれくらい間を開けながら繰り返すのが効果的なのか、という脳科学との関連も大きい気がします。『1ユニット×5』では、そうとう強い短期記憶が成立しそうですが、そのあと復習がないとユニット5あたりで記憶が曖昧になり、三単現のSが出てきた途端、すべてにSをつけたり、過去形が出てきた途端、すべてにedをつけたりするという現象が起きがちです。そういう意味では、ある程度網羅的な文法項目を一気に伝えてしまうことにも意義はあると思います。

かといって一般的なラウンド制の行う『9ユニット×5』だと、各ユニットの記憶が曖昧になるリスクも感じます。今後もう少しアレンジされた亜流(数ユニットごとに繰り返しを行う)が増えてくるんじゃないかなぁ、というのが実感です。

「タスク型の授業とどう違うのか」というコメントもいただきました。これについては、5ラウンドは全くタスク型ではないと思ってます。もちろん教科書にあるタスクをどこかでこなすのでしょうが、ラウンド制のポイントは「とにかく教科書を繰り返して、気がついたら習得していた状態を作る」ことですから、本当はラウンド5(リテリング)のあとにこそ、本当のタスク型言語活動が発動するのだと思ってます。リテリングだけでは、まだ訓練の粋を出ていないですから。

自分は1ラウンド目の段階で全員に全文を暗唱させることで、習った内容(インプット)が確実に短期記憶として確立されたこと(インテイク)を確認し、1.5ヶ月後の2ラウンド目で「教科書の表現を応用して、実際の状況を元にした英会話や作文を行う」ことで活用力(アウトプット)を確認しています。これができた時点で、中期記憶が確立したと見なします。

そして、このインプットからアウトプットまでの流れとは別に、毎定期テストで既習事項からすべてを問う問題を出す(と宣言する)ことで、長期記憶としての確立を目指します。事実上の実力テストですね。今後は、受験期に限らず、その時点での総合英語力を計るGTECのような技能レベル判定テストが主流になるのではないでしょうか。そろそろ各教員がバラバラに定期テストを作るのはやめて、全テストをアウトソーシングしてもいい時期だと思います。若手も多くなり、テストの妥当性を話し合う時間も少なくなってきている現状、各教員の自助努力に丸投げするのではなく、学校組織として教育方針を打ち出す時代になってきているのではないでしょうか。

さて、まとめます。

古いところでは、エビングハウスの忘却曲線が有名ですが、要は「一気に詰め込んでも翌日には半分以上忘れるんだから、間をあけて繰り返し定着させよう」そして「定着させるための学習プランを戦略的に構築するのが教員の仕事だ」というのが、今回の記事のポイントでした。

では、また。

(文責:山田)

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