5ラウンド vs 2ラウンド
ブログの読者さんから質問があったので、詳説します。
例えば『英語運用力が伸びる5ラウンドシステムの英語授業』(金谷、2017)によると……
ラウンド1:リスニングによる内容理解
ラウンド2:内容理解した本文での音・文字の一致
ラウンド3:音読
ラウンド4:穴あき音読
ラウンド5:リテリング(自分の言葉でストーリーを伝える)
とされています。
言語運用は「音から文字へ」「受動から能動へ」と推移することが意識されているのだと思います。
もっと極端な表現に置き換えるなら……
ラウンド1:リスニング(音・受動)
ラウンド2:リーディング(文字・受動)
ラウンド3:スピーキング(音・能動)
ラウンド4:ライティング(文字・能動)
ラウンド5:リテリング(活用)
と言うこともできるでしょう。
「定期テストごとに全レッスンを繰り返す」という表現もできます。
実際に、徐々に難易度を上げていく「全レッスン出題式の定期テスト」を見せていただいたこともあります。
単純な繰り返しへの批判と、それに対する反証は書物にまかせるとして、
今回は『リスクマネジメントとしてのラウンドシステム』について考えます。
突然の休校に対するリスクヘッジとしてならば、別に5ラウンドにこだわる必要はありません。早めにざっと教科書をさらっておくことで、教師・生徒・保護者の三者が安心できる状態を作っておき、時間的な余裕があることが確定した段階で、2ラウンド目に入ればいいのです。
ただし、一気に全レッスンを走り抜けるのは、無理があるでしょう。浅く広く行うことで「実際は何も身につかなかった」という別のリスクも考えると、短期記憶が残っているうちに3レッスン分くらいを繰り返し、中期・長期記憶として定着させる2~3ラウンドが妥当なのではと個人的には思っています。
2ラウンドで行う例としては……
ラウンド1:リスニング、リーディング、レシテーション
(理解と、音声による定着の段階)
ラウンド2:スピーキング、ライティング、単語テスト
(表現と、文字による定着の段階)
という流れを、ここでは提案させていただきます。
大事なのは「多少のカリキュラム変更にも耐えられる柔軟性を持つこと」と「意図的に同じ内容を繰り返すことで自然に定着させること」です。
少なくとも自分は、50分の授業の中で「新出単語」も「新出文法」も「初出の文章理解」も完璧に行おうというのは無茶だと考えています。そして、その50分のうちに「会話」や「作文」まで行おうなんて、スローラーナーにとっては地獄でしょう。
コロナ禍を機会に、様々なことが変化しようとしています。
英語教育も、より一層、柔軟に運用されていっていいのではないでしょうか。
今回の災禍は、それを試みる好機と捉えたいものです。
(文責:山田)